(美奈先生のレシピ小説)第29話 初めての共同作業?!~秋フルーツと胡桃のソムタム
(美奈先生のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説29話
ソムタム!?作れるんですね!美味しそう〜
「お、悪い!ついでに味の最終チェックも頼みます!」
まさか、沙羅と別れたその日に、梨沙ちゃんと付き合うことになるとはなぁ…
火を止めたチリコンカンを味見して、
「もうちょっとパンチがあった方がいいかな…」
と、首をかしげてブラックペッパーを挽く梨沙の横顔を見ながら、良平は心の中でつぶやく。(第27話 失恋は新しい人生のはじまり♡~桃のカッペリーニ)
フードコーディネーターの梨沙と料理カメラマン良平は、お互いプライべートでも料理が趣味のようなものなので、週末は良平宅で一緒に料理をして、ゆっくりワインを飲みながらのんびり過ごす、というパターンが、早くも定着していた。
コロナ禍ということが大きいが、料理好きな二人はおうちデートをむしろ楽しんでいる。
今日は、二人の愛のキューピッドでもある編集者の美緒を、お礼にもてなす、ということで、梨沙も前日から泊りこみ、朝から一緒に仕込みに励んでいた。
「美緒さん、自分のおかげでこうなれたんだからお礼に二人で美味しいもの作って招待しないと罰が当たるわよって脅すんだもんな~」
良平がふと、美緒の綺麗なドヤ顔を思い出して、苦笑いしながらつぶやくと、
「ふふ。でも、良平さんと付き合えるようになったの、ほんとに美緒さんのおかげだもの。今日は頑張っちゃう!」
「俺は嬉しいけどさ。梨沙はほんとに良かったの?
美緒さんに勧められて断れなかったんじゃないかって、実はずっと気になってて。
いや、今更やめるとか言われても、困るんだけどさ。(笑)」
「私がずっと良平さんに片思いしてたの、美緒さん知ってたから。
美緒さんには感謝しかないわ」
さらっと言う梨沙に、良平はびっくりして
「え?!ほんと?
梨沙は仕事はできるし可愛いし気は利くし、俺の出番なんか全くないと思ってたよ…」
「良平さんに彼女がいるってわかって一度は諦めたんだけど(15話 梨沙の勝負まかない~カダイフ風サーモン)
別れたって聞いたから…あの日、思いきって言ったのよ」
良平の失恋パーティーの日、美緒から促され、意を決して
「私は…良平さん好きなので、お付き合いしたいです!」
と、告げた自分のかつてないほどの緊張感がよみがえる。
思い出して思わず赤くなった梨沙を見て、良平はふっと微笑み
「こんないい子が彼女になってくれたのも、美緒さんのおかげだもんな。
よし、俺も本気出すか」
と、腕まくりすると、フライパンに水をはり、コンロに火をつける。
「あ。生春巻きの皮、戻すのね?」
「そう。まだ早いかな?」
「そろそろ作っておいてもいいと思うけど、皮を戻すお湯に油を数滴落としておくと、巻いた後しばらく経っても、皮がくっついたり破れたりしにくくなるわよ」
「ほ~、なるほど。ありがとう。
フードコーディネーターが彼女だと色々勉強になるなぁ」
良平が感心している間に、梨沙は手早くサラダ油をフライパンの水に大さじ1ほど入れてかき混ぜる。
「火を消すわね。皮、入れていいわよ。」
「え、もういいの?」
「熱い湯に浸けると皮が柔らかくなりすぎて扱いにくいから、ぬるま湯で固めに戻すくらいでOKなの」
今日のメニューは美緒のリクエストで「多国籍エスニック」である。
海老とマンゴーの生春巻き、根菜のエスニックナムル、秋フルーツと胡桃のソムタム、3種豆のチリコンカンの手作りトルティーヤ添え、自家製スイートチリソースのチリクラブ(蟹のシンガポール風チリソース)。
メインは、梨沙得意の羊のビリヤニ。
デザートは、美緒の好物の栗たっぷりのチーズケーキ。こちらは、昨夜焼き上げて冷蔵庫で冷やしてある。
ベトナム、韓国、タイ、メキシコ、シンガポール、インド…と、まさに食の世界旅行だ。
美緒の好みを思い出しながら、二人でメニューをあれこれ考えるのも、楽しかった。
一応、前菜3種が良平、良平作のチリコンカンは梨沙が焼いたトルティーヤを添えるので二人の合作。
チリクラブとビリヤニとデザートは梨沙、とざっくり担当分けしているが、仕上げの味のチェックはお互いして、意見を言い合いながら作っている。
チリクラブは、シンガポール人に教えてもらった本格レシピが元になっているが、梨沙特製のスイートチリソースで、さらに深い味わいになっているはずだ。
ビリヤニは、大久保で仕入れた極上のパスマティライスを水に浸けてスタンバイ済み。
添えの様々なスパイスおかずも、既に作ってある。
メインを何にするか、二人で相談していた時
「エスニックで〆って言ったら、やっぱりカレー?
生春巻きあるし、ベトナム料理のフォーもいいかな。
あ、個人的にはパッタイも好きなんだよな~。
それとも、チリクラブの流れで、シンガポールチキンライスにする?」
と、思いつくまま楽しげに提案する良平に、
「美緒さん、ココナッツ好きだから、さらっとしたスリランカカレーでシメてもいいかなとも思ったけど…ビリヤニはどうかな?」
「ビリヤニって家でできるの?!かなり手間がかかるんじゃない?俺は、食べてみたいけど。」
「ビリヤニってインドではもともと、結婚式とかお祭りとかお祝い事に出されていたごちそうなの。
たしかに手間はかかるけど、今回の趣旨にはぴったりかな、と思って。
美緒さんへの感謝を込めて、私作ってみたい」
少し頬を赤らめて説明する梨沙に、良平は
「そうか、そこまで考えてくれてたんだね。じゃ、そうしよう。
具は牛肉かチキン?海老もいいね」
「蟹の後だから、お肉がいいかな。美緒さんはラムが喜びそう」
「お、その手があったか!ラムのビリヤニ、うまそうだな。きっと美緒さん感激するぜ!」
という、流れがあったのだ。
チリクラブを、食べる直前に温めて溶いた卵を流せばOK、というところまで作りこみ、梨沙は
「ビリヤニは炊き立てを食べてもらいたいから、これで終了。
一応こっちの用意は終わったわ」
「おっと、もうこんな時間か。俺、ソムタムが途中だ。すぐ仕上げるよ」
慌ててフルーツをカットし始めた良平に、冷蔵庫をチェックしていた梨沙が
「私がナムルで使った蓮根が少し余ってるから、トッピングに使わない?」
「え、レンコンを?」
「そう。スライスして揚げた蓮根チップをトッピングに散らすと可愛いし、食感のアクセントにもなるのよ。良かったら私、こっちで揚げておこうか?」
「ありがとう、頼むよ。フルーツ切ったから、あとタレを合わせればOK。」
梨沙が持ち込んだ木のスパイス鉢に、戻しておいた干しえび、にんにく、生青唐辛子、ナンプラー、レモン汁、柚子胡椒、パームシュガー、胡桃を加えてゴリゴリとすり合わせる。
梨沙にアドバイスもらって考えた、果物にあうソムタムの合わせ調味料だ。
材料が潰れてタレが混ざったところに、ぶどう、梨、柿、無花果、アボカド、にんじん、胡桃を加え、よく和える。
器に盛り、梨沙が揚げた蓮根チップを散らして完成。
「お、レンコン映えてるわ。いい仕事してるねえ。」
「良平さんが言ったようにアボカド入れたのも正解ね。彩りがキレイ。」
「共同作業って、楽しいんだな。
梨沙と付き合ってから、俺料理がますます好きになってきたよ」
ニコニコしながら言う良平に、
「私も、良平さんと料理するの、すごく楽しい。」
と、満面の笑みで答えながら梨沙は
あの日勇気を出して、本当に良かった…
と、しみじみ思うのだった。
ピンポーン…
美緒が、やってきたようだ。
さて、今日はからかわれるのも覚悟しなきゃ。
「はーい」
と、元気に答える梨沙は、幸せいっぱいの笑顔のまま
はずむような足取りで、玄関に向かうのだった。
●秋フルーツと胡桃のソムタム
《材料・4人分》
種なしぶどう1/4房、梨1/4 個、柿1/2個、無花果1個、アボカド1/2個、プルーン1個、蓮根1/2節(80g)、プチトマト4個、胡桃10g、たれ{干しえび(戻して)大さじ1/2、にんにく1/2片、生青唐辛子1/2本、ナンプラー・レモン汁各大さじ1、ブラウンシュガー大さじ1弱、胡桃10g}、飾りのバジル適宜
《作り方》
① 材料はすべて一口大に切る。胡桃は乾煎りして、粗く刻んでおく。
② 蓮根は2、3ミリ厚さの銀杏切りにして、素揚げする。
③ フードプロセッサーやすり鉢にたれの材料を入れて、つぶし混ぜる。
④ ①をボウルにあわせ、③のたれを加え、手早く和える。
⑤ 器に盛ってバジルと②の蓮根を飾る。
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