(美奈先生のレシピ小説)第11話 寒い夜の家ごはんの幸せ~カレー鍋からの絶品リゾット
(顧問美奈のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説11話!!!読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
塾から帰ってきた太郎が、キッチンに入るなり鼻をクンクン言わせ、
「またカレー!?ママ、これ昨日の残りでしょ?美味しかったけどさー。僕今日、給食もカレーだったんだよね~!」
と、複雑な表情で帽子を脱ぐ。
「あらぁ、よりによって学校も!カレー続きになっちゃうのね…」
ルーはまだ残っているし、具材を少し増やせばカレーは2日続いても許される、と思っていた真理もさすがに少し考える。
「カレーうどんとか、カレーパスタはどう?カレーチャーハンでもいいわよ!」
ソファーでスマホをいじっていた由香が、振り向きもせずに
「私、ダイエット中だから炭水化物はパス!今日おやつ食べちゃったから。」
と言い放つ。
おやつをやめて、3食しっかり食べればいいのに…。
真理からすれば、いったいどこが気になるのか全く理解に苦しむスラっとした由香なのだが、思春期の女子には思うところあるのだろう。
「う~ん、昨日はパパも急な接待で食べてくれなかったから、カレーまだたくさん余ってるのよね。なんとか消費したいんだけど、どうしようかな。」
ぶつぶつ言いながら台所に戻ろうとすると、TVのニュースキャスターの
「東京地方では、本日3年ぶりに木枯らし1号が観測されました。今晩は冷えるので、温かくしておやすみください」
という明るい声が聞こえてきた。
「そうだわ。寒いと言ったら鍋よね!カレー鍋はどう?」
「鍋ならいいよ!」
「私も~」
と、無事子供たちの同意を得て、夕飯はカレー鍋と決まった。
ジャガイモ、ニンジンの具はまだかなり残っているが、メインの鶏肉が少し心もとない。
鶏ガラスープでのばして温まったところにキャベツとしめじを加える。火が通ったところで、ウインナーだ。
ウインナーを加えたら、長くは煮ない。
ウインナーはとてもいい出汁が出るのだが、長時間煮込むと、ウインナー自体が美味しくなくなってしまうのだ。
出汁も十分に出て、ウインナー自体も美味しく食べられるのは、せいぜい5分から10分だ。
仕上げの隠し味は、醤油麹と赤味噌。
足した鶏ガラスープや野菜の水分で薄まった味は、隣の紗智子からもらったお手製の醤油麹が活躍してくれる。
旨味と甘みのある醤油麹に赤味噌は、カレーとも相性抜群だ。
以前はカレーの仕上げにほんの少し醤油を入れて隠し味としていたが、紗智子に教えてもらい、それを醤油麹と赤味噌に変えてから、ぐっと深みが深くなった。
鍋をそろそろ食卓のカセットコンロに移そうと思っていたところへ、ちょうど一家の主である洋平も帰ってきた。
「お、いい匂いだな。カレーか?」
「パパ、おかえり!今日はカレー鍋だよ!」
太郎が大声で告げる。
「美味しい~」「カレーとウインナーって最強!」「うまいな!」「キャベツもカレーに合うんだね!」
家族の好評に大満足で、にこにこしながら真理は、
「これ、シメにご飯いれてリゾットにしたら最高なのよ!」
「ママァ。だから、私、ダイエットだって…」
と頬をふくらませる由香に、
「まあ、みててごらんなさいよ!」
トマト缶ともち麦ごはんを加え混ぜ、上にとろけるチーズをたっぷりいれ、蓋をして弱火でむらす。 真理の家では、ここ数年、ごはんはもち麦入りだ。
もち麦は、白米はもちろん、玄米よりカロリーや糖質も低く、食物繊維やビタミン、ミネラルが驚くほど豊富で、整腸作用や血糖値上昇の抑制にも良いといわれる、優れた健康フードである。
取材でこのもち麦の栄養価・健康効果の素晴らしさを知って感激した真理は、それ以後ご飯を炊く時は、もち麦と白米を1:2が基本だ。
白米の一部を置き換えるだけなので、面倒もない。
家族の中で何か決める時は由香の判断が大きいのだが、ダイエットにいい、と聞けば由香はそれだけで大喜びで支持する。
由香がOKなら、娘に甘い洋平も余程のことでない限りは速攻OKなのだ。
チーズが溶けたところを蓋を取ると、
「やだー!これ、絶対美味しいやつじゃん!映える~」
由香がすかさずスマホで撮影をはじめる。
「映えるだけじゃなくて、美味しいんだから、まあ食べてみてよ!」
ドヤ顔で盛り付けはじめる真理に、
「ん~、今日はもう炭水化物はやめようと思ってたんだけどな。でももち麦だし、美味しそうだから、一口だけ食べてみる!」
しかし、チーズの糸をひかせながら口いっぱい頬張るや否や、
「ヤバい~!美味しすぎる!」
と、すかさずお代わり。鍋はあっという間に空になった。
「気持ちいいわね~すっかりなくなると」
「ママ。残りもの、消費できてよかったね!」
由香がにやりとして、返す。
「パパ!パパは昨日食べなかったけどさ、私たち昨日もカレーだったんだから。」
告げ口する由香に、
「おまえたち、こんなうまいカレーが2日も続けて食べられて幸せだなあ!」
と洋平は、本気でうらやましそうな表情で答える。
こんな時真理は、この人と結婚してよかったな、と思うのだ。
「見つめあっちゃって、やらし!」
と毒づく由香の声も温かい。
鍋は、幸せな家族の象徴だ。
みんなで囲めて、会話も弾み、しかも副菜がなくても許されるので、主婦的には楽。
シメのご飯は、すべての美味しいエキスを吸ってぷくぷくなので、美味しくないはずはない。
寒い間は、カレーの翌日は、これに決まりね…
鼻歌を歌いながら片付けを始める真理なのだった。
●カレー鍋のチーズリゾット
【材料・4人分】
カレーの残りお玉3、4杯くらい、鶏ガラスープ(湯に鶏ガラスープの素大さじ1)600ml、ホールトマト50g、キャベツ1/4玉、しめじ100g、ウインナー1袋(130g)、醤油麹大さじ2/1~1、赤味噌小さじ1、もち麦ご飯1杯分、とろけるチーズ・粗挽き黒コショウ・パセリのみじん切り各適宜
【作り方】
① キャベツは一口大に切る。しめじは石づきを取って、適当に分ける。
② カレーの残りと鶏ガラスープ、ホールトマトを崩しながら鍋に入れて、混ぜながら温める。
③ ぐつぐつしてきたら、キャベツとしめじを加える。
④ 火が通ったら、ウインナーを加え、3,4分たったら醤油麹と味噌も加え混ぜる。
⑤ 具がほぼなくなったら、残ったスープにホールトマトを混ぜ、さっと洗ったもち麦ご飯を加え混ぜ、温まったら弱火にして、上からとろけるチーズをたっぷりかけて、蓋をする。
⑥ チーズが溶けたら、黒コショウとパセリをふる。
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