(美奈先生のレシピ小説)第2話 スパイスの香りは恋のチャンス!
(美奈先生のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説開始!!!読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
スパイスの香りは恋のチャンス!
「先輩はぁ〜こんなに素敵なのに、8ヶ月も彼がいないなんて、周りの男が見る目ないんですぅー!」普段は2杯でほろ酔いの美菜子が.今日は珍しく3杯目のワインを飲みながら、5つ年上の会社の先輩であるまどかにしなだれかかる。
「も〜、美菜ちゃんたら声大きすぎ!酔ってるのね。」
隣の席のカップルが顔を見合わせて笑っているのが目に入り、赤くなったまどかは慌てて、し~っと口に指をあてる。
美菜子にぐっと近づき声を落として、
「私は本当にモテないのよ。自分で言うのもなんだけど、私ってソツなくなんでも器用にこなすタイプに見えるでしょ?でも実際はけっこうおマヌケじゃない?
完璧なお姉さまってイメージで近づいてくるオトコは、みんながっかりするみたいなのよね…」
と、真剣な顔でため息をつく。
確かに、元読モ出身という噂のまどかは、ファッションもメイクも隙のない美人で一見パーフェクトなのに、何もない廊下でコケたりすることもあり、美菜子も最初は驚いたものである。
(でも、そういうところが男の人にはギャップ萌えなんじゃないの?
そこが先輩の可愛いところだと思うんだけどな。)
心の中でつぶやく美菜子に、
「美菜ちゃんは逆でしょ。すごく女の子っぽくて何だかほっとけないけど、ちゃんとしっかり芯もあって自分を持ってて、カッコいいと思うもん。そういう子がモテるのよね~。」
「そ、そんなことないですよ。というか、今日は私のことはいいんです!先輩、今気になる人は居ないんですか?」
「…う~ん、そうねー」
まどかと頭に浮かんだのは、なぜか最近よくからんでくるお隣さんだった。
…なんで、あの人が!
「さあ、そろそろ帰ろ!まだ火曜だよ」
赤い顔で立ち上がるまどかに
(あ、先輩気になる人がいるんだ!誰だろう?きっと素敵な人なんだろうな)
と、美菜子は心地良い酔いの中でぼんやり思う。
…危ない危ない、美菜ちゃんって案外鋭いんだから。
家に戻ったまどかは、今日は軽いものをつまんでばかりでシッカリ食べていなかったのに気付き、軽い空腹感に襲われる。
「こんな時間に締めご飯とか太っちゃうかな。う~ん、もち麦の野菜リゾットとかなら、ヘルシーだから許されるわよね」
つぶやきながら、早速もち麦を取り出す。
もち麦の栄養価は優秀だ。食物繊維も玄米の4倍あり、ダイエットにも最適と言われている。。 本来もち麦と白米を1:2くらいで炊くのが美味しいとされているが、ぷりぷりした食感のもち麦が大好きなまどかは白米と半々にあわせるのが好きだ。
野菜室をのぞくと、蓮根と赤パプリカ。
「にんにくと玉ねぎもあるし、これで充分!」
野菜をあら微塵にして、オリーブオイルでさっと炒め、そこに白米ともち麦も洗わずに加える。
もう1つのコンロでは湯を沸かす。
冷水を足しても米はふっくら膨らまないが、熱湯を足しながら炊くと、ぷっくり美味しくふくらんでいく。リゾット作りの大切なポイントだ。
野菜と米を炒め、思いついてカレー粉を入れる。
少しワインを入れ、煮立ったら湯をひたひたに入れ、コンソメの素を半分。
あとは、水分が減ったら熱湯を足していくだけだ。
蓮根からも良い出汁がでてくれる。
イタリアン好きのまどかの冷蔵庫にはチーズは常備されてるし、仕上げの醤油とガラムマサラが味をまとめてくれれば完璧だ。
「えーと、パセリはみじん切りして冷凍しているのが残ってたわよね」
カレーのいいにおいがキッチンに広がってきた。
「あ〜ワインが飲みたい。今日は美菜ちゃんが先に酔っちゃったから、なんだか酔えなかったのよね。我慢すべきかな?一杯だけ、飲んじゃう?」
もうリゾットは出来上がってしまったが、コンビニはまどかのマンションの目の前だ。
「悩んでる間に、買いに行こう!もち麦リゾットの良いところは、冷めてもぷりっと美味しいところだもんね。」
意を決し、急いで財布を握って部屋を出たところに、ちょうど帰宅しようとしていた隣の部屋の祐輔に、ぶつかりそうになる。
「おっとー!これ、俺の好きなカレーの匂い!こんな時間に血相変えてどこに行くんですか?」
「ワイン買いにコンビニよ。カレーじゃなくてカレーリゾットだけどね。」
「ワインなら、コンビニで買うよりうまいのが、うちにありますよ!カレー味に合うやつ。進呈するから、リゾット一口食わせてくださいよ!」
やたら人懐こい男だが、恐らくかなり年下だ。
隣のよしみで世話になったこともあり、ご近所さんとして親しくはしているが、流石に部屋に上げるほどではない。
躊躇しているまどかを面白そうに眺めながら
「あれ、もしかして引いてます?お隣さん襲うほど飢えてないから、ご心配なく!まどかさんのリゾットが純粋に食べただけなのに、なに警戒してるんすか?」
…生意気!年下のくせに。ここは、年上の貫禄見せなきゃ。
「警戒なんて、これっぽっちもしてないわよ!
私の口に合うワインをちゃんと持ってきてくれるのかを心配してたのよ!もう出来てるんだから、早くワイン持ってきてね。
…リゾット一人分しか作ってないからホントに一口しかあげないわよ」
勝気に言い返すまどかに、してやったりとニヤっと笑い
「やった!すぐ行きまーす!」
と、祐輔は嬉しそうに自分の部屋に飛び込む。
あ~あ。流れで彼氏でもないオトコの子を部屋に呼んじゃった。
…まあ、リゾットわけてあげて、いいワイン飲ませてもらえるんだから、単純にラッキーと思えばいいわよね・・・うん、食べる量半分に減って、ダイエットにもなるし!
自分に言い訳しながらリゾットを盛りつけ、パセリをふり、マイクロプレイン(おろし金)でしゅしゅっとパルミジャーノチーズをけずる。
これでたちまち本格的な味になるし、見た目もリストランテっぽくなる。
祐輔に食べさせるのなら、ベーコンでも入れたかったな…と思っているところに、タイミングよくピンポンが鳴る。
「お待たせ!アルザスのソーヴィニヨンですよ。」
「ありがと。でも食事したあとのシメだから、野菜リゾットなのよ。しかももち麦。男の人はあまり好きじゃないかも」
「野菜リゾット、いいじゃん。モチムギ初体験だけど、俺好き嫌いないから大丈夫!」
調子よく答える祐輔は、まどかが渡したワインオープナーで器用に蓋を開けると、素早く2つのグラスに注ぐ。
「かんぱーい!いただきまーす!」
「お!もち麦うまい。ぷりぷりしてる!蓮根のサクサクの食感もいいすね!」
「ありがとう。ワインも美味しい!」
まどか好みのライチのようなアフターが、カレー風味にほどよく爽やかさをプラスしてくれる。
2杯目のワインをくいっと空けた祐輔が急に頬を染めて神妙に
「まどかさん、俺、実は・・・」
と身をのりだす。
「え?え?ちょっと待って!私、そんなつもりで家にあげたんじゃ・・・」
と慌てるまどかに頓着せず、祐輔はさらに赤い顔になって続ける。
「…俺、ほんとは好きなんですけど、、、」
「…ええ?!」
「好きなのに、すげー弱いんです、酒。…男のくせに情けなくて、すみませんっ!」
と言うなり、テーブルにつっぷし、いびきをかいて寝始める。
な、なにこの展開!好きってお酒のことだったの?!
こんな一瞬でコテっと寝るなんて、漫画みたいな人ね・・・
アテがはずれてホッとした一方、内心ちょっとガッカリしている自分に慌てて
「ないない!グラス2杯のワインで寝ちゃう人なんて、ないから!」
・・・しかしこの人、どうしよう。あ~あ、無防備な寝顔しちゃってー。
とりあえずは、しばらく寝かせておくか。
ブランケットをそっとかけ、鼻歌を歌いながら後片付けをはじめ、意外にも浮かれている自分に気づき、また「ないない!」と慌てて首をふるまどかなのだった。
《本日のレシピ》
カレー香る♡蓮根のもち麦リゾット《材料・2人分》
玉ねぎ1/4個、にんにく1/2片、蓮根50g、赤パプリカ1/4個、白米・もち麦各1/2カップ、オリーブオイル大さじ1、白ワイン50cc、A{チキンコンソメの素1/2個、カレー粉小さじ2、ハーブソルト・黒胡椒各少々}、オリーブ油少々、熱湯適宜、B{削ったパルミジャーノレッジャーノチーズ(なければ粉チーズ)大さじ1、醤油小さじ1/2、ガラムマサラ少々}、塩・粗挽き黒胡椒少々、パセリのみじん切り(生がなければ乾燥)・仕上げのパルミジャーノレッジャーノ各適宜
《作り方》
① 玉ねぎ・にんにくはみじん切りに、蓮根・赤パプリカは粗みじん切りにする。
② フライパンにオリーブオイルを熱し、野菜と米・もち麦を炒める。米が透明になったら白ワインを入れてAを加え混ぜ、煮立ったら熱い湯をひたひたになるまで注ぐ。
③ その後水分が減ったらひたひたに注ぐ、を繰り返しながら16~18分、好みのアルデンテになるまで湯を足しながら煮る。
④ リゾットが好みの固さになったらBを加えて全体を混ぜ、塩こしょうで味を調える。
⑤ パセリをふり、パルミジャーノをけずる。(なければ粉チーズでもよい)
澤田美奈講師のお料理教室 美奈のおしゃデリ・クッキング
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