(美奈先生のレシピ小説)第21話 手羽元でごちそうクリスマス♪3種の発酵チキン
(美奈先生のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説21話
クリスマスに重宝する3種の手羽元ローストチキン。レシピ付き٩(ˊᗜˋ*)و
読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
コロナも落ち着いてきたので、娘の由香の仲良しの友人との集まりや、夫洋平の会社で忘年会を兼ねての外食があるかも、という期待を込めて、真理が聞く。
「家で食べるよ。リモートの部署もあるし、うちの社まだ宴会って雰囲気じゃないんだよ」
「私も、この前彼氏と別れたばかりだから、今年は予定ないよ。
お母さん、みんなに外で食べてもらいんでしょ？」
高2の娘の言葉にいろんな意味でぎょっとして
「由香。あんた、いつのまに彼氏なんてできたの？ しかも、知らない間に別れていたのね…」
「そんなこと、いちいち親に報告するJKはいないよ。
とにかく、明日はまっすぐ帰るから。」
隣に座っている洋平が、彼氏という言葉にぴくっと反応して、固まったのがわかる。
が、何か言って娘に嫌われるのが怖いので、目は泳いでいるが、そのままテレビを見ているふりをしている。
そんな洋平が少し哀れになり、真理は明るい声で
「よし、じゃあみんなで楽しくクリスマスしよう！
ママ、ケーキ買っておくわ。パパの好きなチョコレートケーキにするね。」
「やったー！ケーキケーキ！僕、七面鳥が食べたいなあ。」
無邪気にねだる太郎に、真理は再びぎょっとする。
「そんなのうちのオーブンに入らないわよ！ 言っておくけど丸鶏も入らないわよ！」
小さめのオーブンとはいえ、本当は丸鶏くらいは入るのだが、丸鶏を焼いたことのない真理は先手を打って、慌てて言う。
「そっかー。じゃあさ。骨がついてる小さいチキン焼いてよ！」
「…手羽元ね。まあ、あれならどうにかなるか…」
実はチキンはケンタッキーで買う気満々だった真理なのだが、
仕方なく小声でつぶやく。
そんなわけで、家族そろってのおうちクリスマスが決まり、 真理は夕食の後片付けもそこそこに、隣に住む料理上手の紗智子に急いでlineを打つ。
「お疲れのところ、ごめんなさいね。
明日の夜ご飯なんだけど、手羽元で簡単で失敗しないで美味しくて、クリスマスっぽくするにはどうすればいいかしら？」
すぐに紗智子から返信がくる。
「この前お分けした塩麹と醤油麹と玉ねぎ麹はまだある？ それで3種のタレを作って、明日午前中に手羽元買ってきてすぐマリネして。
夕方までつけておけば、柔らかく美味しくなるから。
あとはオーブンで焼いて、ワックスペーパーやリボンを巻けば、手羽元でもクリスマスっぽくなるし、かえって可愛くて食べやすいわよ。後で詳しく送るわね」
と返信がきてから、5分後には、もう丁寧な3種のタレとチキンの焼き方のレシピ、イメージ画像まで送られてきた。
なんて仕事が早く、親切な人なんだろう！
真理は感動し、ハートマークをちりばめたお礼のlineを打つ。
ああよかった。これで、安心して眠れる！
タレ作るのは明日でいいわね…。
翌朝早速、手羽元を買ってきて、3種のタレを合わせる。
「えーと。塩麹、醤油麹、玉ねぎ麹に、それぞれ調味料を混ぜて、夜までつけておけばいいのね。全部家にある調味料でできるから、ありがたいわ！」
塩麹はベトナム風、醤油麹は中華風、玉ねぎ麹はイタリアン、とそれぞれテイストが違うので楽しいし、紗智子のレシピなら味は間違いない。
発酵料理が得意な紗智子は、常に塩麹・醤油麹・玉ねぎ麹を仕込んでいて、作り方を教えてもらっても作る気がしないズボラな真理に、定期的に分けてくれるのだ。
その代わり真理は、取材でもらう有名店のお菓子や希少なお酒をちょいちょいおすそ分けして、本人的にはwinwinと満足している。（第5話 麹は主婦の味方！ズボラさんでも絶品料理に♪）
手羽元をマリネしたら、とりあえず夕方まで仕事に集中する。
ケーキとパンは買ってあるので、簡単にサラダを作れば十分だろう。
取材でもらったホテルのシェフ監修の高級スープ缶は、こういう時のために大事にとってある。
マリネした鶏を200度のオーブンで20分焼いて、ペーパーで巻いて、フリルレタスの上にのせてみると、我ながら可愛く仕上がった。
「あ、美味しそう！チキンだチキンだ！！」
太郎がはしゃいだ声でキッチンに入ってくる。
「パーティ―っぽいじゃない！ママ、がんばったね。」
由香と洋平も帰ってきて、オトナはビール、子供たちはシャンメリーで乾杯。
「これ、ペーパーの色によって、味が３つ違うのよ」
「わあ！3種類も作ったんだね。全部美味しいし、お肉も柔らか～い！」
「うん、うまいよママ。これなら喧嘩にならずにみんなでいろんな味を楽しめていいね。」
「このちょっとピリ辛で甘いの、めちゃめちゃ美味しいじゃん。
これ、ほんとにお母さんが作ったの？」
疑わし気な由香に、真理はふんっと鼻を鳴らし、
「失礼ね！今夜のために朝から仕込んだんだから。
ま、レシピと麹はお隣の紗智子さんだけど…」
家族からの賞賛の言葉を浴びて、真理もすっかり気持ちよくなる。
「メリークリスマス！家族そろってのクリスマスは、やっぱりいいわねえ」
「クリスマス料理作るの、めんどくさがってたくせに。
ま、私も来年は多分彼氏と過ごすから、今年みんなで食べられてよかったかな」
「あんた、来年は受験でそれどころじゃないでしょ？」
「あ～！それ、今言う？」
笑顔いっぱいの食卓に、真理は心豊かになり、改めて、自家製の麹調味料を分けてくれて美味しいレシピまで教えてくれた紗智子に、心の中で手を合わせる。
それにしても、麹調味料って使えるわ。
お肉も数時間でこんなに柔らかくなってるし、なんたってこれ入れるだけで深みのある美味しさになるんだもの。
育成ゲームアプリにハマってる由香が料理にも目覚めて、麹も育ててくれないかしら…
と、これだけ美味しさに感動しても、どうしても自分では作る気がしない真理なのだった。
【3種の発酵チキン】
① 手羽元１2本を4本ずつ分けて、それぞれ調味料を混ぜて、1時間～1晩冷蔵庫でマリネする。
② 200度に予熱したオーブンで20分焼く。
●塩麹ベトナム風チキン
手羽元4本、A｛塩麹大さじ1、蜂蜜・酒・太白胡麻油（オリーブ油）各小さじ１、スイートチリソース小さじ1/2、おろし生姜小さじ1/4、黒胡椒少々｝
●醤油麹中華風チキン
手羽元4本、A｛醤油麹大さじ1、蜂蜜・酒・胡麻油各小さじ１オイスターソース小さじ1/2、おろしにんにく小さじ1/4｝
●玉ねぎ麹イタリアンチキン
手羽元4本、A｛玉ねぎ麹大さじ1、蜂蜜・白ワイン・オリーブ油各小さじ１、レモンペッパー少々｝
※作り方はYouTube「みなきっちん」でも配信中。 手羽元でごちそうクリスマス！3種の発酵チキン～塩麹・醤油麹・玉ねぎ麹
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