(美奈先生のレシピ小説)第7話 甘くて辛い…恋ってアジアン風味?!
(美奈先生のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説第7話!!!読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
「先輩、どうかしたんですか?」
「え、ううん。なんでもないの。」
「朝から顔がシリアスで、らしくないですよ。」
心配そうにのぞき込む美菜子に、慌てて笑顔を作るまどかだが、10秒後にはまたため息をついていた。
原因は、マンションの隣部屋の祐輔のことだ。
先日、ひょんなことから祐輔お手製の料理を食べさせてもらいほろ酔いの祐輔に告白され、なんとなく付き合うことになったのだが、改めて年齢を聞くと、5歳年下だという。
いや、もうすぐまどかは誕生日なので、正確にいうと6歳違いとなる。
まどか自身は、3つくらい年下かも…と思っていたが、祐輔は同い年かせいぜい1,2歳上くらいに思っていたようで、驚いた顔してたっけ。
実は年下と付き合って、うまくいったことないのよね…
一見隙のない美人のまどかに「憧れのお姉さま」という目で近づいてくる年下男は多いのだが、素のまどかはかなり天然で、あれ?と引いてしまう男もまた少なくなかった。
さらに甘えん坊で自分が頼りたい方なので、できれば年下よりうんと年上の方が相性良いと思っている。
…まあ、もう決めたんだから、とりあえず付き合ってみるか。
付き合う前から悩んでも仕方ないもんね。
まどかは割り切ることにする。
週末は、早速祐輔にごはんをごちそうする約束をしているのだから。
メニューは、グリーンカレーと生春巻きである。
料理の話になり、何が一番得意かと聞かれ、う~ん、エスニックかな、と答えたら、
「エスニックってたとえば、どんなもの?」
「えーと、グリーンカレーとか、生春巻きとか…」
「お、それがいい!グリーンカレーと生春巻き!俺、辛いの大好きなんだよ。この前のカレーのリゾットもうまかったもんなぁ」
と、あっさりメニューが決まってしまった。
いざ週末。早速料理に取りかかる。
グリーンカレーに関しては、エスニックマニアのまどかはルーから作ることもあるが、今回は無難に、カルディで買ったペーストだ。
インスタントとはいえ非常によくできていて、ナンプラーやココナッツミルクを足すだけで、本格エスニック味になる。
具材は王道にチキンにした。チキンは前日から塩麹とガラムマサラをまぶしておく。
塩麹は、先日料理好きの山下課長が作り方を教えてくれ、それ以来、欠かさず作っていた。
肉を一晩漬けておくだけで、ぐっと柔らかくなり、臭みもとれ、風味も増す。
好きな野菜は何かと聞いたら、茄子が一番好き、と言っていたから、茄子はどどんと丸ごと使う。
ヘタを取らず皮をむき、おしりから十字に切り込みを深く入れて煮込めば30分でとろとろになる。
まずはカレー作りから。
まず、ココナッツオイルで、グリーンカレーペーストとスパイスを炒める。
油をココナッツオイルにすること、そして最初にペーストとホールのスパイスをじっくり炒めて香りと風味を引き出すことで、インスタントとは思えぬ本格的な美味しさになる。
香りがでたら玉ねぎ、マリネした鶏肉を炒め、水を注いで、茄子と一緒に煮る。
火が通ったら牛乳とココナッツミルクを加え、ナンプラーとレモン汁で調味すれば完成だ。
ご飯は、タイの長粒米、ジャスミンライスをローリエやシナモンと一緒に炊く。
パラっとした仕上がりで香り良いジャスミンライスはさらさらのタイカレーと相性抜群なので、ここは妥協したくない。
スーパーでは売ってないが、まどかの大好きなカルディでは2合単位で売っているので重宝している。
器に盛った後はパラリとフライドオニオンをかけ、プランターで育てているバジルを飾れば、見た目もエスニックらしさ倍増だ。
そして、生春巻き。
海老を茹でたお湯で豚肉、春雨を続けて茹で、あとはきゅうりとサニーレタスなど野菜を切れば準備完了。
茹で汁をフライパンに移し、冷めたらほんの少しサラダ油をたらし、生春巻きの皮をくぐらせて戻す。 油を加えることで、後で皮同士がくっつきにくくなるのだ。
まだ固めかな、と思うくらいの段階で取り出すのも、失敗しないポイントだ。
青じそをバックにした海老が透けるように巻き上げると、仕上がりも綺麗になる。
たれは、ナンプラーを茹で汁でのばし、砂糖とレモン汁、おろしにんにくを加えて作る。
シンプルだが、アジア特有の甘酸っぱさがなんともクセになる。
たれの隠し味は、パクチーの根と、新生姜の甘酢漬けで、どちらも深みをだしてくれる。
そして、デザートには王道、タピオカのココナッツミルク。
戻したタピオカに、牛乳と生クリーム、ココナッツミルクを混ぜるだけだが、間違いない美味しさだ。
少しラム酒をたらして、オトナ味に仕上げた。冷蔵庫に冷やしておけば、スタンバイOK。
ベトナムビールのサイゴンスペシャルもよく冷えている。
アジア料理にはアジアのビールが合う。
日本のビールより味は薄めだが、それがまたエスニック料理には非常にマッチするし、アルコール度数もワインより遥かに低いから、お酒が弱い祐輔でもいけるだろう。
「美味しい!甘くて辛くて、本格的だ!パラパラのご飯も、このカレーに合うよな~!それにこの茄子!形崩れてないのにトロトロで、君って天才じゃないの?!」
ビールを流しこみながら生春巻きをモリモリとたいらげ、カレーを3杯もお代わりした祐輔は、感極まったように叫ぶ。
「大げさだってば!ほぼインスタントだから、祐輔君にも出来るわよ。あ、デザート出すわね」
「お、これは噂のタピオカじゃないですか!俺実は、今さらながら、タピるの初めてかも!」
興奮する祐輔は、こちらも一気食い。そして…バタリ。
あ~私のバカ!デザートにラム酒を入れたの、忘れてたわ…
それにいつのまにか、ビールこんなに飲んでる!
付き合うようになって初めてのおうちデートなのに、今日も進展なしか。
私たちってもしかして、ずっとこんな感じなんじゃないかしら…?!
気持ち良さそうに眠る祐輔のおでこにそっとキスして、トホホな笑顔でブランケットを取りに行くまどかだが、気持ちは幸せでいっぱいなのだった。
●とろける茄子とチキンのココナッツグリーンカレー
《材料・2~3人分》鶏もも肉300g、塩麹大さじ2、ガラムマサラ大さじ1/2、玉ねぎ・赤パプリカ各1/2個、茄子2~3本、ココナッツオイル大さじ1、ニンニク・生姜のみじん切り1片分(小さじ1)、クミンシード小さじ1/2、グリーンカレーペースト25g、A{ピーナッツバター(練りごま)大さじ1、黒砂糖・ナンプラー各小さじ1、レモン汁小さじ1/2、コンソメの素1/2個}、水・白ワイン各1/4カップ、B{ココナッツミルク・牛乳各1/2カップ}、フライドオニオン・パクチー(バジル)各適宜、ジャスミンライス{ジャスミンライス2合、水2合、ココナッツオイル大さじ1、シナモン1本、ローリエ1枚}、バジルの葉適宜
《作り方》
① 鶏肉は食べやすく切って、塩麹とガラムマサラに一晩漬けておく。玉ねぎは薄切りに、赤パプリカは乱切りに、茄子はヘタを取らず皮をむき、おしりから十字に切り込みをヘタ側まで入れる。
② 鍋にココナッツオイルとニンニク・生姜・クミンシードを温め、香りがでたらグリーンカレーペーストを加え、全体がなじんだら、鶏肉を加えて炒める。
③ 鶏肉に火が通ったら、玉ねぎも加え炒める。Aも加え全体がしっかりなじんだら、水とワインを注ぎ茄子を入れ、蓋をして30分煮る。
④ 鶏肉と茄子が柔らかくなったら、Bを加え、全体が温まったら火を止める。
⑤ ジャスミンライスを炊く。米をとがずに鍋に入れ同量の水を注ぎ、ココナッツオイルをふり、シナモンとローリエをのせる。蓋をして強火で炊き、沸騰したら弱火で10分、その後10分蒸らす。シナモンとローリエは取り除き、全体を混ぜる。
⑥ 皿に④と⑤を盛り合わせ、フライドオニオンをふり、バジルの葉を飾る。
●ベトナム風生春巻き
《材料・2~3人分(2本分)》むき海老4尾、豚薄切り肉60g、春雨20g、青じそ4枚、きゅうり1/4本、サニーレタス1枚、ピーナッツの粗微塵適宜、サラダ油大さじ1、A{ナンプラー・ゴマ油各適宜}、生春巻きの皮2枚、パクチー適宜
ニョクチャム(たれ){ニョクマムかナンプラー・ゆで汁各大さじ3、レモン汁大さじ1、砂糖大さじ2、おろしにんにく小さじ1/2、香菜の根の粗微塵切り、大根・人参の千切り、赤唐辛子の小口切り、あれば生姜の甘酢漬けのみじん切りからっきょう漬け各少々}
《作り方》
① きゅうりとサニーレタスは千切りにする。
② 鍋に湯をわかし、春雨を表示通り茹でて戻し、食べやすく切る。同じ鍋に海老を入れさっと茹で、厚みを半分に切る。続いて豚肉を色が変わるまで茹でる。(ゆで汁はたれに使うので、漉してとっておく。)いずれも熱いうちにAにからめておく。
③ ②のゆで汁をフライパンに移して油を加え、30度くらいまで冷めたらライスペーパーをつけてもどし、堅く絞った濡れ布巾の上に広げる。
④ 海老、青じそ、レタス、きゅうり、春雨、肉の順にのせ、ピーナッツをふり、手前から巻き上げる。
⑤ 2,3等分にカットして盛り付け、パクチーを飾る。たれをつけていただく。
「祐輔お手製の料理の巻」はコチラ
「山下課長の塩麹の巻」はコチラ
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