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  • > (美奈先生のレシピ小説)第10話 オトコの勝負料理は、イタリアン!(美奈先生のレシピ小説)

    (美奈先生のレシピ小説)第10話 オトコの勝負料理は、イタリアン!

    (美奈先生のレシピ小説)

    美奈先生のレシピ小説10話!!!読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬

    (美奈先生のレシピ小説)第10話 オトコの勝負料理は、イタリアン!
    やっと土曜か…

    祐輔は大きな伸びをして、勢いよく布団から出る。

    今日はお隣に住む彼女、まどかに手料理をふるまう約束をしているのだ。
    一週間ぶりに掃除機をかけ、鼻歌を歌いながら洗濯をする。

    今日はまどかの誕生日だ。
    まどか自身は残念ながら土曜出社で夜まで仕事らしいので

    「夕飯何が食べたい?なんでもご馳走するから遠慮なく教えて!」

    と、意気込んで聞くと、

    「久しぶりに祐輔君の手料理が食べたいな。それが最高の誕生日!」

    と、想定外の返事をされてしまったのだ。

    祐輔は確かに料理男子だが、学生の頃から料理教室に通っていて、チーズの資格も持っているというまどかの、プロ並の料理レベルには到底及ばない。
    これはかなりハードル高いぞ!と、しばらく前から、メニューを悩みに悩んでいた。

    誕生日だから、豪華に見える料理がいいよな。
    まどかさん、羊が好きって言ってたから、骨付きのラム肉をオーブンで焼くか。
    で、チーズ好きだから、ブルーチーズのソースなんてオシャレじゃないかな?

    副菜は…エスニックとイタリアンが好きらしいから、カポナータをちょっとエスニック風にアレンジ、なんて、良くないか?
    この時期旨い、秋茄子をたっぷり入れたやつ。

    あとは…何を作ろう?と考えていた時に、ふと思いついて、フードコーディネーターをしている姉に電話して、さりげなく知恵を求めることにした。

    彼女に作る、なんて言って突っ込まれたりからかわれたりするのは不本意なので、世話になってる会社の先輩にご馳走することにでもするか。

    「…てなわけで、羊にカポナータは決まったんだけど、バランス的に他にどんな料理が合うと思う?」

    「ふぅん。…ところで、その先輩って、女性?」

    「…え。なんで?」

    「女性なら、無花果のサラダとか、喜ぶんじゃないかと思って。今無花果美味しいからね。生ハムにベビーリーフなんかと合わせて、バルサミコかけたりするといいわよ。あ、クセのあるチーズが大丈夫なら、シェーブルも加えるとオシャレよ~」

    「お~無花果にシェーブル!それは、間違いなくオシャレだ!」

    「あと魚介もあった方がいいから、お刺身のホタテか海老を紫玉ねぎかプチトマトと一緒にマリネにしたら?色もきれいよ。
    オリーブオイルとレモン汁とにんにくと塩胡椒で和えるだけで美味しいし。
    仕上げは、パセリのみじん切りじゃなくて、イタリアンパセリの粗みじんにすると、これまたオシャレになっちゃう。」

    「いいね~。姉貴、オシャレの天才じゃん?」

    「ふふ。マリネはにんにく効かせすぎたら、彼女に嫌がられるから気を付けて。あとでレシピもLINEしてあげる。じゃ、がんばってね!」

    え?!なんで彼女ってわかったんだろう?!怖いな、姉貴…
    焦ってお礼もそこそこに電話を切りつつも、副菜メニューが決まってほっとする。

    ラム肉のソテー ブルーチーズソースに、エスニック風味のカポナータ、無花果と生ハムのサラダ、ホタテとプチトマトのマリネ。
    お、すげえ。これってコジャレイタリアンじゃん!

    俺がまどかさんにフレンチのコース作るのは、ちょっと頑張りすぎて痛い感じだけど、イタリアンならなんとなく男らしくて、多少粗っぽくても許される感じだよな…

    と、勝手なイメージを膨らませ、祐輔は一人頷く。

    乾杯のシャンパーニュは用意してあるから、ケーキをピックするついでに、軽めのイタリアワインを買ってこよう。

    さすがに手作りケーキはハードル高いから、こちらはまどかお気に入りのパティスリーに予約済なのだ。

    部屋の掃除を念入りにチェックして、ケーキとワインを買って帰ってきた祐輔は、早速料理にとりかかる。

    まずはカポナータ。シチリアの野菜料理だ。
    フランスのラタトウィユと似ているが、ラタトゥイユがズッキーニメインであるのに対して、カポナータは茄子メインが一般的だ。

    そしていっぺんに塩胡椒で炒め煮にするラタトゥイユに対し、茄子やパプリカを素揚げしてから砂糖やビネガーも加えて煮込むカポナータの方が少しばかり手間はかかるが、その分旨味も強く複雑な味わいになる、というのはまどかの受け売りだが、それ以来祐輔もカポナータが好きになった。

    玉ねぎとセロリとオリーブを炒め、素揚げした茄子とパプリカ、ホールトマトとオリーブを加え、塩胡椒に砂糖、ワインビネガー、ガラムマサラを入れてさらに炒める。
    ガラムマサラはカレーの仕上げくらいしか使い道がないと思っていたのだが、実はいろいろ使える、と教えてくれたのもまどかだ。

    「カレー味にはしたくないけどエキゾチックな味に仕上げたい時に便利なのよ。ワインにも合う味になるの」

    と、言ってたっけ。
    以前作ってくれたポテトサラダにも入っていたが、たしかに、カレー味ではないのに不思議なエスニック風味になっていて、ワインがすすむオトナな味わいで後を引いた。

    絶賛する祐輔に照れながら、自家製だというガラムマサラを分けてくれたのだ。

    「スパイスを合わせただけ」と言ってたが、やっぱりすごいよな、まどかさんは…

    カポナータには、まどか手作りのガラムマサラをふってさっと混ぜれば、完成。

    ホタテのマリネは、2等分にしたプチトマトと刺身用ホタテを、姉が教えてくれた分量通りのドレッシングで和えるだけ。
    サーブする前にイタリアンパセリを粗く刻んでかければ完成。確かに、パセリだとどことなく昭和感漂うが、イタパセだと洗練された仕上がりに見えそうだ。

    無花果と生ハムのサラダは、無花果の皮をむいてカットして、カッテージチーズも加え、レモン汁と塩胡椒とはちみつで和えておく。

    姉がLINEで「シェーブル(山羊のチーズ)が手に入らなければ、カッテージチーズでもOK」と教えてくれたので、チーズはカッテージチーズにした。
    オシャレ度はシェーブルに劣るが、以前まどかが「カッテージチーズって低脂質低カロリーで、身体にもいいから好き♡」と言っていたのを思い出したのだ。

    乾きやすい生ハムはサーブ前に和えて、これまたカルディ好きのまどかに教えてもらったバルサミコクリームをかければ出来上がりだ。

    通常のさらっとしたバルサミコ酢と違って、長時間煮詰めたかのようなとろみと甘さがあるバルサミコクリームは、料理だけでなくアイスにかけても美味しい。

    そしていよいよメイン。
    ラムは昨日からワインやスパイスでマリネしている。
    ここでも、まどかのガラムマサラが活躍だ。羊の臭みをとってくれるし羊と相性の良いクミンも入っている。

    冷蔵庫から出したばかりのラム肉をフライパンで一気に焼いて焦げ目をつけ、その油でじゃがいもを炒めて、塩こしょうする。
    オーブンの天板にパプリカをのせ、その上に焼いたじゃがいも、ラム肉、ローズマリーをのせて、待機。
    まどかがきたら、オーブンのボタンを押すだけだ。

    ラム肉とじゃがいもを焼いたフライパンには、赤ワインと蜂蜜を入れてアルコールを飛ばし、粗く刻んだブルーチーズを加え黒胡椒をひき、少し煮詰めてから火を止めればソースも完成。

    キッチンを片付け、前菜を仕上げたところで、ちょうど約束の時間になり、ピンポンが鳴る。

    「わ~いいにおい!」

    と、にこにこしながら部屋に入ったまどかは、テーブルの上に並べられた前菜を見て

    「すごい!こんなにいっぱい作ってくれたの?!大変だったでしょ?」

    と目を丸くし、感謝のまなざしで祐輔を見つめる。

    「いやいや、俺がまどかさんに料理とか、恥ずかしいけどさ。まずは乾杯!誕生日おめでとう!」

    「ありがとう!このシャンパーニュ、美味しい~!
    前菜もすごいよ。カポナータもさりげなくガラムマサラがきいてて美味しい!
    サラダに無花果って…なに、このオシャレ感!どうしちゃったの?!」

    嬉しそうに食べるまどかに、祐輔もニヤニヤを隠せない。
    …姉貴、サンキュー!でも、ごめん。姉に教わった、と言ってシスコンだと思われても困るから、そこは言わないでおこう。

    「あ、今からメインの羊だから、よかったらこっちの赤ワインも飲んでね!」

    「えー!羊?!嬉しい~!しかもソースがブルーチーズ!ワイン飲みすぎちゃうじゃない。
    羊もロゼ色に焼けてるし。いつの間にこんな料理上手になっちゃったの?!」

    旺盛な食欲で美味しそうに羊を頬張るまどかに、

    「あまり褒めすぎてハードル上げないでよ!ケーキは買ったやつなんだから」

    「あ、このケーキ、私が好きなお店のじゃない!ここから遠いのに、わざわざ買いに行ってくれたのね。感激…」

    ほろ酔いと嬉しさでピンク色の頬になっているまどかに、祐輔は(可愛すぎかよ!)と心の中で叫ぶ。 こんなとろけそうな笑顔が独占できるなら、もっと料理上手になってやる!

    「嬉しいのはこっちだよ!まどかさんの誕生日一緒に過ごせるなんてさ。これからも、えーと末永くよろしく!」

    「今日は本当にありがとう。…私ね、実はひとつだけお願いがあるんだけど」

    「え、なに?」

    ドキッとして、まどかの真面目になった顔を見る。

    …まさか、美味しかったけどやっぱりあなたとは付き合えない、とか…頼むからやめてくれよな…

    「いい加減、まどかさんって呼ぶの、やめませんか?」

    「え?」

    「まどかでいいよ!」

    と、照れたように目をそらすまどかを、祐輔は思わず抱きしめる。

    感動してそのまま動かない祐輔に、まどかははっとして

    「重いよ、祐輔!まさかまた…」

    「こんな日に寝るかよ!」

    苦笑いしてさらに強く抱き寄せる祐輔はいつもより大人っぽく、年下ということを忘れてしまう。

    「今日は最高の誕生日だわ・・・」

    祐輔の胸の中で幸せそうに目を閉じるまどかなのだった。


    仔羊の香草焼き ブルーチーズソース

    《材料・2人分》
    骨付きラム肉4本、A{赤ワイン・オリーブ油各大さじ1/2 、おろしにんにく・蜂蜜各小さじ1/2、ガラムマサラ・ハーブソルト・コショウ少々}、じゃがいも1個、赤パプリカ・黄パプリカ各1/4、ローズマリー4本、塩・黒胡椒各適宜、赤ワイン大さじ2、はちみつ小さじ1、ブルーチーズ30g

    《作り方》
    ① ラムの骨と骨の間や脂肪の部分に包丁で切り目を入れ、軽くたたく。Aを混ぜて、お肉にたっぷりとすりこみ、1時間~1晩ほど置いておく。 じゃがいもは4~6つのくし切りに、パプリカは太切りにする。
    ② 冷蔵庫から出したばかりのラム肉をフライパンで一気に焼き、両面焦げ目をつけ、その油でじゃがいもを炒め、塩こしょうする。天板の上の網に肉とじゃがいもをのせる。肉の上にローズマリーをのせる。
    ③ オーブンに②の天板を入れ、網の下の天板に、野菜を入れて、塩コショウとオリーブ油をふる。余熱なしの下火で200度で18~20分ほど焼く。
    ④ 焼いてる間にソースを作る。②のフライパンに赤ワインを入れてアルコールを飛ばし、粗く刻んだブルーチーズを加え黒胡椒をひき、少し煮詰めて火を止める。
    ⑤ 皿に③のラム肉、野菜を皿に盛り、④のソースをかける。


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