(美奈先生のレシピ小説)13話 ふわふわパンケーキ~Valentineはベタでいい♡
(顧問美奈のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説13話!
読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
世の中はコロナ渦でまだまだ落ち着かぬとはいえ、今日はバレンタイン。
並んで歩くカップルがみな幸せそうなのは、当然かもしれない。
バレンタイン記念に、二人でお揃いのマグを買った後、どこかでお茶をしようとカフェを探している耕太と美菜子も例にもれず、寒さに負けない幸せオーラを漂わせている。
白い壁のパンケーキ専門店の脇を通る時、ウインドウから母親の隣で、山盛りのクリームを盛られた苺のパンケーキを懸命に頬張っている少女の姿が目に入り、美菜子は思わず微笑む。
耕太も同じ光景を目にしたようで、くすっと笑い
「すごいボリュームのクリームだな。パンケーキってまだ流行ってるの?
昔母親が作ったホットケーキは食べた記憶あるけど、いわゆるパンケーキって、俺実は食べたことないんだよ。
ああいうもりもりのクリームに顔をうずめるのが、子供の頃からの夢だったんだけどなあ。」
と、うらやましそうに眺めながらつぶやく。
「え、そうなの?じゃあ食べてみる?ここ人気店だけど、今ならすぐ入れそうよ。でも耕太、甘いもの苦手じゃなかった?」
「そうなんだよ。生クリームは大好きなんだけど、甘いのがダメなんだよな。だからあのもりもりクリームには惹かれるけど、パンケーキとかクレープは甘すぎて食べられないんだよ。」
悩まし気に答える耕太を見てしばし考えていた美菜子は、ふと明るい声で
「わかった!じゃあ今から甘さ控えめの耕太が食べられるパンケーキ焼くわ。ここからなら家までタクシーで15分だし、すぐにできちゃうから」
にっこり笑う美菜子に、耕太は信じられない、といった顔で
「え?!美奈子、パンケーキまで作れるの?!すげー!!」
「すごく簡単なのよ。そこの角曲がると明治屋があるから、チーズと生クリームと苺だけ買って帰りましょう」
「シャンパンも買おうぜ。美菜子の好きなピンクの泡!」
興奮した表情で耕太は早くも、美菜子の手を引きながら歩きだす。
手早く買い物をすまして家に戻った美菜子は、期待に満ちた目でキッチンまでついてくる耕太に笑いながら
「じゃあ、ちょっと待っててね。」
と言うと、
「あ、俺も手伝うよ!もし手伝えることあれば、だけど。」
普段全く料理をしない耕太には珍しく、手伝いまで申し出る。
よっぽどパンケーキが早く食べたいのだろう。
「ふふ、ありがと。じゃあ、大好きな生クリームと卵白を泡立ててもらおうかな」
「やるよ!泡立てデビュー、ドキドキするな。」
真剣な表情で腕まくりする耕太に、大きなボウルに入れた卵白と泡だて器を手渡す。
「こうやって泡立てれば、卵白は結構早く堅くなるから。
ツノがたつまでって言っても難しいか。まずは、色が半透明から白くなって艶が出るまで、泡立ててみてね」
「ツヤ?!…う、うん。」
自信なさげに泡だて器をおそるおそる持った耕太だが、
「だんだん、色が変わっていくんだな!面白いな~」
と、やがて鼻歌まじりに、不器用な手つきながら楽しげに混ぜだす。
美菜子はその間に、卵黄を入れたボウルに、リコッタチーズ、生クリーム、薄力粉、ベーキングパウダー、そしてきび糖をごくわずかだけ入れて、混ぜていく。
「美菜子、これくらい?」
「すごい、さすが男の人は早いわ!ちょっと泡だて器を持ち上げてみて?そうそう、そのくらいでちょうどいいわ。よくできました!」
艶も出てしっかりツノもたったメレンゲを受け取り、卵黄のボウルに移し、さっくりと切るように混ぜていく。
「これ混ぜれば、後は焼くだけなのよ」
「え?!マジ?パンケーキってそんな簡単にできるんだ!」
目を丸くする耕太に、
「そうでしょ?でね。オリーブオイルで焼いてもいいんだけど、ココナッツオイルで焼くと、甘い香りで美味しいの。」
「へえ~」
「焼いてる間に耕太は、生クリームを泡立ててね。今度は手だと大変だから、電動泡だて器でやってみて。堅くなり始めたら早いから、気を付けてね。やりすぎるとボソボソで美味しくなくなっちゃうの。」
「わかった!」
メレンゲで自信を得たのか、今度は軽やかに答え、早速泡立てを始めた耕太を横目に、美菜子はフライパンを温めココナッツオイルを敷く。
そのまま生地を流して普通に焼くのも、つまらないわよね…
少し考えて、ハートの抜き型を、棚の奥から取り出す。
製菓材料のメーカーに勤める美菜子が、会社で扱っている商品のひとつである。
去年のバレンタインの後に商材のサンプルとして販促部からもらったものの、使う機会もなく何となくしまい込んでいたものだ。
ハートの型を、本人目の前に使うのはベタすぎてちょっと痛い気もするが、何しろ今日はバレンタインだ。
今日使わずしていつ使うの?と美奈子は心の中で自分に突っ込みながら、勇気を出してフライパンに型をおき、生地をそっと注ぐ。
そんな美菜子の複雑な心中に気づかず、耕太は無心にホイップを泡立てている。
「こんなもん?まだかな?」
美菜子の顔をうかがう耕太の表情が、先生に宿題を見せる中学生のように厳粛なのがおかしい。
「あ、あとちょっと。これだとまだ柔らかくて、絞ると流れちゃう」
「お、おぅ」
ハートには全く気づかず、引き続き泡立てる。
極弱火なので、焼きあがるのには時間がかかる。
美菜子はホイップの様子に注意しながら、ベランダのミントを摘んで洗い、苺をカットする。
「耕太ストップ!そのくらいでいいわ。
クリームに、このマスカルポーネチーズとヨーグルトも加えて混ぜたらOKよ。」
「へえ。ホイップって生クリームだけじゃないのか」
「生クリームだけでもいいんだけど、今日はクリームの量が多いから、飽きないようにより美味しくね。そうだ、ラム酒もちょっぴり入れちゃおう。」
ホイップしたクリームに、マスカルポーネとヨーグルトとラム酒を手早く混ぜこんでから、パンケーキの焼き具合を確認した美菜子は、
「あ、生地もちょうど焼きあがったわ」
と火を止める。
ようやくフライパンを見る余裕がでた耕太も、振り向いて目を輝かせる。
「おお、ふっくら焼けてる!しかもハート!嬉しいな~。」
無邪気に喜ぶ耕太にほっとしながら、
「生地にもホイップにもお砂糖ほんの少ししか入れてないから、これなら耕太でも大丈夫なはずよ。」
と、絞り器にホイップを入れて耕太に渡す。
「好きなだけ絞っていいわよ。」
「夢が叶うなあ。大人になってよかった」
もりもりとホイップを絞り出しながら、耕太は感に堪えない表情でつぶやく。
「顔をうずめてもいいわよ」
笑いながら答える美菜子も、耕太の高揚が伝染してだんだんウキウキしてくる。
二人でお菓子を作るのがこんなに楽しいとは。
耕太が奮発したロゼのシャンパーニュで乾杯してから、ふわふわのパンケーキに、二人同時にナイフを入れる。
「やわらかくてうまい!クリームもりもり、最高だよ。甘さもちょうどいいし、お酒効いてるのがまたいいな~。美菜子、ありがとう!」
「耕太が頑張って泡立ててくれたクリームよ。好きなだけ食べて。私も心していただきます。笑」
「でも美菜子、こんなハート型なんか持ってたんだ?!いつ買ったの?俺、初めて見たぜ。」
ちょっと不満そうに口を尖らす耕太に
「これ、会社でもらったものだけど、使うのは初めてよ」
「そうか、なら良かった」
「ふふ。耕太、ほっぺにクリームついてる」
「そういう美菜子もついてるよ。」
笑いながら美菜子のほっぺについたクリームをそっとなめ、そのまま抱き寄せる耕太に、
…ハートの型を使う私より、耕太の方がよっぽどベタなことやってるわ…
口の中のクリームの余韻を味わいながら、甘やかにとけていく美菜子なのだった。
●苺のパンケーキ マスカルポーネクリーム
卵3個、A{リコッタチーズ・ヨーグルト各100g、生クリーム50cc、薄力粉100g、ベーキングパウダー小さじ2、砂糖大さじ1}、生クリーム100ml、ヨーグルト(無糖)大さじ3、マスカルポーネチーズ100g、ラム酒小さじ1、ココナッツオイル小さじ1、ミントの葉・苺・チョコレートシロップ各適量
《作り方》
①卵は卵黄と卵白にわけ、卵白は泡立てメレンゲにする。
②卵黄とAを別のボウルに合わせ、メレンゲを加えさっくり混ぜる。
③フライパンを温め、ココナッツオイルを薄くひいて、②をお玉で落として、両面焼く。
④飾りの生クリームはきび糖を加えてしっかりツノが立つまで泡立て、マスカルポーネとヨーグルトとラム酒を混ぜる。
⑤パンケーキを器に盛り、④のホイップを盛り、イチゴとミントの葉を飾る。チョコレートシロップをかけて仕上げる。
第11話〜の登場人物はコチラ
第1話〜第10話の登場人物はコチラ
第1話はコチラ
第2話はコチラ
第3話はコチラ
第4話はコチラ
第5話はコチラ
第6話はコチラ
第7話はコチラ
第8話はコチラ
第9話はコチラ
第10話はコチラ
第11話はコチラ
第12話はコチラ
澤田美奈講師のお料理教室 美奈のおしゃデリ・クッキング
詳細はこちら
澤田美奈講師のインスタグラム
詳細はこちら
澤田美奈講師のフェイスブック
詳細はこちら
澤田美奈講師のホームページ
詳細はこちら
澤田美奈講師のYouTube みなきっちん
詳細はこちら