(美奈先生のレシピ小説)第5話 麹は主婦の味方!ズボラさんでも絶品料理に♪
(美奈先生のレシピ小説)
美奈先生のレシピ小説第5話!!!読むだけでお料理上手な気分になれるかも〜♬
第5話 麹は主婦の味方!ズボラさんでも絶品料理に♪
あ~やっとみんな、出かけていったわ…
二人の子供と旦那を送りだし、真理は急いで掃除機をかける。
今週末締め切りの連載が2本もあるというのに、間に合うかしら…
まだ手のかかる年齢の子供が二人いる、働く主婦の朝は、ちょっとした戦場だ。
なんとか遅刻させないように皆を家から追い出し、後片付けに掃除、洗濯、買い物…としていると、あっという間に午前中が終わる。
真理としては、午後から夕方の子供が帰ってくる貴重な数時間は、じっくり机で仕事をしたい。
雨がふりそうになったら洗濯をしまったり、座ったと思ったら宅急便が来たり、でなかなか集中するのは難しいのだが、その時間を逃すと、自分の時間はない。
朝はお弁当作りやみんなの朝食作りでてんてこ舞いで、食べる暇はないので、午後からのエネルギーチャージに早めの昼ごはんだけはしっかりとる、と決めている。
「そういえば、昨日安売りしてたから大量に買っちゃった牛肉、隣の山下さんからもらった塩麹まぶしておいたんだったわ。あれ使って、牛丼にでもしようかな。」
お隣で夫婦二人暮らしをしている山下さんの奥さん紗智子は、食品メーカーの課長さんとのことで、平日はあまり見かけないが、土日は家の前を掃いたり、近所のスーパーで顔を合わせたりしているので、最初は挨拶をする程度だった。
自分より少し年上と思うがあまりに肌が綺麗なので、何の化粧品を使っているのか聞いてみると、少し照れくさそうに
「ありがとう。でも化粧品のせいじゃないと思うわ。発酵食品をよく摂っているからかしら」
と、首をかしげて言う。
職業柄、かなり突っ込むクセのある真理は
「え~?どんな発酵食品なの?こんなに綺麗になれるなら、私もマネしたいわ!」
というと、親切にも、
「手作りするのがポイントなんだけど、意外と簡単にできるのよ」
と、塩麹や醤油麹、甘酒や味噌の作り方を教えてくれた。
「市販のものと違って酵素やカラダにいい菌が生きているから、腸にもよいの。腸がよくなると、お肌もきれいになるわよ。」
「あ、それが世間でいう腸活や菌活ってやつなのね!」
「1日1回混ぜればいいだけなんだけど、出来上がるのに1週間くらいかかるから、よかったら少しおすそ分けしますね」
と、自家製調味料をわけてくれたのだ。
見た目はバリキャリ風なのに、下町気質の親切な人だわ…と、
真理は非常に好感をもち、取材で山のようにもらった有名菓子店のスイーツをお返ししたら、それはそれで予想以上に喜んでもらえ、以来二人は、手作りのものと取材のいただきものを時々物々交換する仲になった。
紗智子は、
「自家製の塩麹は酵素が生きているから、2日でも3日でも、漬けておけば肉も魚もどんどん美味しくなっていくの。でも、薄いお肉は漬けすぎると柔らかくなりすぎてボロボロになっちゃうから、せいぜい1晩でOKよ。30分でも美味しくなるわよ」
と言う紗智子の言葉を思い出しながら、1切れだけフライパンで焼いて、恐る恐る食べてみる。
なにこれ、ほんとに美味しくなってる!
以前同じ肉を買った時とは比べ物にならない柔らかさで、アミノ酸が増した感の旨味もある。
―塩麹、すごいわ。一晩漬けておくだけでこんなにお肉を柔らかく美味しく変身させちゃうなんて、時間のないズボラな私にはぴったりじゃない…
よし、浸けた牛肉は全部、家族の夜ご飯用に、一緒に煮込んでおこう。
これまた紗智子にもらった醤油麹と、お気に入りの調味料ケチャップマニスで、玉ねぎと一緒に炒め煮にすることにした。
塩麹と醤油麹、ダブルの麹効果で、牛肉炒めも美味しい健康食に昇格だ。
ケチャップマニスは、取材で訪れたインドネシア料理の店で知ってからその美味しさに感動し、以来カルディで欠かさず購入しているのだが、みたらし団子のように甘くコクのあるアジアの醤油だ。
ナシゴレンやサテやガドガドなどインドネシア料理には欠かせない甘醤油だが、日本の煮魚や肉じゃが、牛筋大根などに使うと抜群においしくなる。
甘みが強いので、醤油代わりというより砂糖代わりに使うと、驚きの美味しさになるのだ。
炒めた牛肉をごはんにのせ、中央をあけて、卵黄をおとす。
軽く混ぜながら一口食べて、真理は思わず歓声を上げる。
「美味しい!安い肉なのに、和牛みたいな熟成感があるじゃない!」
汁だくに作ったので、夕飯にはここにきのこでも混ぜてボリュームアップすれば、立派なメインになるだろう。レタスで巻いてたべさせてもいい。
副菜には、今日中に消費しておきたい、もやしをナムルにしよう。
よく洗ったもやしをルクエに入れて、600wのレンジで5分チンして、しっかり水をきり、チューブのおろしにんにくとごま油と塩麹とすりごまで和えればよい。
今まで塩で味つけていたところを塩麹にすると、甘みや深みも加わり、ぐっと美味しいナムルになることを、この前発見した。
あとは、温泉卵でいいかしら。
これまた、レンチンで簡単にできる。
コーヒーカップに冷蔵庫から出したての卵をひとつ割り入れ、水少々を加え、ソーサーをかぶせて、600wで40~50秒。
茶こしなどに取り出して水を切れば、温泉卵の完成だ。
だし醤油をかけて万ネギとかつおぶしをふれば、これまた立派な一品になる。
卵1個ずつしか作れない方法だが、手軽にできるので、真理のお気に入りの副菜のひとつだ。
…それにしても、お肉美味しかったわ。
紗智子に会ったら、改めてお礼を言わなくては。
そういえば、取材でもらったちょっといいブランデーがあったわね。旦那も私もブランデーは飲まないから、週末になったら届けに行こう。
料理上手な紗智子なら、たとえ飲まなくても、料理やお菓子に美味しく使ってくれるにちがいない。
ブランデー入りのチョコレートケーキとか作ってくれて、おすそ分けでもしてくれたらラッキーなんだけどな…
自分のちゃっかりした思いつきにペロッと舌をだしてから、ハッと我に返り、
「いけない!まったりしてる時間はなかったわ。子供が帰るまで仕事仕事!」
と表情を引き締め、眼鏡をかけ、別人のようにキリリとデスクに向かう真理なのだった。
《本日のレシピ》ダブル麹のやわらか牛丼
《材料・2人分》ごはん2杯分、玉ねぎ100g、牛薄切り肉200g(あれば塩麹大さじ1でマリネ)、サラダ油小さじ1、A{酒・水各50cc、醤油麹大さじ1・1/2、ケチャップマニス小さじ2強(なければオイスターソース・みりん各小さじ1}、卵黄1個、煎り胡麻・七味唐辛子・紅生姜・焼き海苔各適宜
《作り方》
① 鍋に油をあたため、薄切りにした玉ねぎを炒める。しんなりしたらAを注いで、中火で一煮立ちさせたら牛肉を加え、アクを取りながら10分程煮る。
② 丼にご飯を盛り、①をのせ、中央に卵黄を落とす。好みで胡麻や七味、紅生姜などをかけていただく。
※塩麹でマリネしなくても、美味しくできます
《塩麹の作り方》:乾燥麹100g、塩30g
① 麹をタッパーに入れて手でよくほぐし、塩を混ぜる。
② 水をひたひたに注いで混ぜ、3~4時間おく。
③ 麹が水分を吸収しているので、さらにひたひたに水を入れ混ぜる。
※室温において、1日1回まぜて、1週間~10日でできる。(真冬は2週間位かかる)
《醤油麹の作り方》:乾燥麹100g、濃口醤油150cc
④ 麹をタッパーに入れて手でよくほぐし、醤油を加える。
⑤ よく混ぜて、3~4時間おく。
⑥ 麹が水分を吸収しているので、さらにひたひたに醤油を入れ混ぜる。
※室温において、1日1回まぜて、10日~2週間でできる。(真冬は1ヵ月位かかる)
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