(発酵食研究会)-活動報告-富士酢の醸造元見学に行ってきました!
(発酵食文化研究会ー酢ーに関する記事)
(発酵食研究会)-活動報告-京都にあるお酢の醸造元、(株)飯尾醸造さん見学の様子をレポートします!
株式会社飯尾醸造(京都)
京都にあるお酢の醸造元、(株)飯尾醸造さんへお邪魔致しました
京都、といっても寺社仏閣のある京都市街のイメージとは全く異なる場所。京都駅から更に電車で2時間程乗り、日本海側へ。
【飯尾醸造さんのお酢造りに対するこだわり】
●米
米酢は、造る際に1リットルあたりお米を40g使うことがJAS規格で定められています。(写真:一番左の量)捉え方を変えれば、40g使用していれば米酢と言えるのですが、実はこの量のお米ではお酢は造れません。
ですので、この量でお酢を造ろうとすると醸造アルコールをプラスすることになります。
では、お米だけでお酢を造ろうと思ったらどれくらいの量が必要なのでしょう。
答えは、120g以上(写真:左から2番目)。
こうするとお米だけで造られる『純米酢』となります。
飯尾醸造さんの富士酢は、さらにその量を上回る200gで造られ(写真:中央2つ)、さらにそのワンランク上の富士酢プレミアムは、320gで造られています(写真:右2つ)。
そしてさらに、そのお米は無農薬栽培。
契約農家さんに機械を提供したり、自ら稲刈りをしたり…
手塩にかけて大切に育てられたお米からお酒を造って、お酢を醸造しています。
●酒造り・酢造り
お酒も造っているお酢屋さんは、なかなかありません。びっくりすることだらけです。
(4代目の飯尾さまが案内して下さいました。)
造られたお酒をタンクに入れて、酢酸菌を入れてお酢を造ります。
その際に、かまぼこ板をタンクと蓋の間にかませます。
(写真:社長さんが指差ししてくれているところです。)
発酵具合によって2~8枚を調整するのです。
タンクの中はこのような感じ。
これは、酢酸菌が膜を作っている状態です。
酢酸菌が、タンクの上の方で、アルコールを酢に変えていきます。
タンクの下の方にあるアルコールの方が軽いのでそのアルコールが上に行き、重いお酢が下に行きます。
わざわざかき混ぜる必要はなく、放っておけばお酢ができるのです(=静置発酵といいます)。
時間はかかりますが、じっくりと造ることでお米の甘味・旨味も生かされ、まろやかな酸味のお酢になります。
ですので、タンクの中を見せていただいた時、思いきり香りを嗅いでも全然ツンとこず、とても驚きました。香りまでまろやかでした。
●タンク
使用されているのは最高ランクのステンレスタンク。製薬会社でも使われているような最高級のもので、金属イオンが流出しないのだそうです。
最初は2週に1度発酵具合をチェックして、酸度が5%になると週1チェックしていきます。
●熟成
発酵が終わったら熟成タンクへ移し8~12か月熟成させます。その間も放ったままではなく、2か月に1度タンクを移し、適度に空気を含ませることで刺激が取り除かれてきます。
こうすることで、酢酸の比率が低くなりまろやかなお酢ができあがるのです。
富士酢が使いやすく食べやすいのには、こんなに手間・時間がかけれていたからなのですね。
情熱とこだわりのお酢。当然高価!なのかと思いきや…
●価格
飯尾醸造さんと他メーカーと比較すると、原料代:10倍以上
造る期間:12倍以上
こんなにも違います。
そこで社長さんから、「価格はどれくらい違うと思いますか?」と聞かれました。
原料も時間も10倍以上も違います。
単純に考えると10倍以上でもおかしくないです。
正解は…価格:約2.5倍。
お米造り、原料調達、こまめな管理、長期の発酵・熟成期間…
少しお話を聞いただけでも、これだけの手間暇がかかっているのに、その程度の価格差。
造り手のプライドや事情を尊重した価格設定ではなく、できるだけ買い求めやすいように、と消費者のことも考えられた価格設定なのです。
使う人とお酢への愛だと感じました。
お酢造りへのこだわりと愛情、熱意、努力が飯尾さまのお話からひしひしと伝わる…そんな見学となりました。
忙しい中ご対応くださった飯尾さま、社員の方々、どうもありがとうございました。
株式会社飯尾醸造
ライター 発酵食文化研究会 礒畑綾
発酵食料理教室『綾糀(あやのこうじ)』