(発酵食研究会)-活動報告-(株)角谷文治郎商店「三河みりん」の蔵見学に行ってきました!
(発酵食文化研究会ーみりんーに関する記事)
(発酵食研究会)-活動報告-株式会社角谷文治郎商店(愛知)の蔵見学の様子をレポートします!
この碧南エリアは、醸造に適した水と気候により200年以上前からみりんづくりが盛んに行われ、歩いて回れる範囲に4つもみりんの蔵があります。
今回はその中の1つ、角谷文治郎商店にお邪魔して参りました。
本みりんの原料は、「もち米・うるち米(米麹)・焼酎」の3種類。
みりんは、焼酎の中でゆっくりと甘酒を糖化熟成させるイメージ、と教えて下さいました。
焼酎が糖化熟成の調整役になってくれるのですね。
ちなみに、日本酒では寒さが発酵の調整役になってくれます。
お米をたくさん使うみりんだからこそ
角谷文治郎商店では、原料のお米は国内産のものを使用。これは国内産が安心だからというだけではなく、国内のものを国内で消費することで日本の田んぼを守ることにも繋がるからです。
また、みりん造りに使われる焼酎は他から仕入れる蔵も多いのですが、角谷文治郎商店では自家醸造(こちらも国産米使用)。
みりんを一升瓶分造るのに、お米は一升必要で(「米一升、みりん一升」)、焼酎はその半分の量が必要と言われています。それだけ多くのお米を使って造られているのです。
だからこそ、お米にこだわっているのだなと感じました。
↑このみりん1瓶造るのに、お米も同じ量必要ということ。
↑ちなみに、全部同じお米ではなく、線より上が「うるち米」、線より下が「もち米」。 比率はだいたい1:9。
みりん製造禁止を乗り越えて
多くのお米を使うみりんは、戦後8年、製造が禁止された時代があります。また、解禁されたあとも高額の酒税がかけられたことにより、いわゆる抜け道的に「みりん風調味料」が造られるようになりました。
そんな苦しい時代の中でも、本格みりんを造ることを諦めなかった職人さんがいるから、現代にも本物のみりんが残っており、角谷文治郎商店もそうした蔵の1つなのです。
みりん造りの工程
①仕込み
もち米は1日3回、計3tもの量を蒸します。蒸し上がったもち米は、麹や焼酎と混ぜられていきます。
蒸し上がったもち米を少し食べさせていただきました。
蒸し米なので少し固さはありますが、それでももっちりとして甘味がありおいしいお米でした。
原料全てが混ぜ合わせられたら、タンクへ入れられます。
タンク1本あたり、一升瓶2000本分(3t)の容量。
そして仕込み後、1か月くらいでもろみを混ぜる天地替えをという作業を、手作業でおこないます。この大きなタンクを手作業で…!
②搾り
仕込み後、3か月くらいしたら搾り作業に入ります。この搾るタイミングも、マニュアル的ではなくもろみの状態=お米の溶け具合などを見極めておこないます。
角谷文治郎商店では、搾りの部屋は四重扉のクリーンルーム。
春に仕込んだものはだいたい6月頃に搾るのですが、みりんは甘いので虫が寄ってくる可能性があるそうです。
なので、虫が入ってこないようにクリーンルームなのですね。
搾られたみりんは、また1年以上熟成させます。
ちなみに、みりんのもろみも搾ると粕=みりん粕が出てきます。
日本酒でいう酒粕にあたるものです。
みりん粕は昔はおやつに食べられていたくらい、まだまだ甘味の残っているもの。
最近ではシフォンケーキなどのスイーツづくりにも活用されているのだとか。
もちろん、そのままをオーブンでカリッと焼いてもとてもおいしいですよ。
③瓶詰め
瓶詰作業は機械ですが、チェックは人の目で。
そして、ラベルが貼られ箱詰めされ、私達消費者の所へ届きます。
みりんと料理
日本伝統の発酵調味料であるみりんですが、近年ではフレンチや中華でも使われています。と、いうのも調味料という使われ方ではなく「米のリキュール」として使われるようになってきたからだそうです。
日本でも昔はお酒として飲まれていたみりんですから、その理由も納得ですね。
角谷文治郎商店のみりん
角谷さんは、「お米のおいしさをみりんで表現している」とおっしゃいます。角谷文治郎商店のみりんは、料理に使うと優しい甘さが素材の味を引き立たせてくれます。
そのまま飲むと、まさに「お米のおいしさが表現」されていることをダイレクトに感じられると思います。
こんなにおいしいみりんになるなんて、原料のお米も嬉しいでしょうね。
最後に、角谷さんから教えていただいたみりん仕込みの時期をご紹介。
1年に2回仕込む蔵の場合、
・春は、梅の咲く頃から桜が散る頃まで
・秋は、新米が採れて菊の花が咲く頃まで
と言われるそうです。粋ですね。
株式会社角谷文治郎商店HP
ライター 発酵食研究会 礒畑綾
発酵食料理教室『綾糀(あやのこうじ)』主宰
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