(発酵食研究会)-食トピ-おひつのすすめ
(おひつに関する記事)
今年もやってきました、新米の季節! 発酵醸造に欠かせない木桶の仲間、木製おひつについてご紹介します。
おひつのすすめ
今年もおいしい新米の季節になりました。そして、今やお米の戦国時代と呼ばれるほど日本各地から様々な新銘柄のお米が誕生しています。
高性能の炊飯器や土鍋を使うなど、炊き方にこだわる方も多いのではないでしょうか。
今回は、炊いた後のその先、「保存」についてこだわり目線で見ていきたいと思います。
おすすめのごはんの保存方法は、ずばり「おひつ」です。
おひつとは?
おひつとは、炊きあがったごはんを一時的に保存するための容器です。もともとは木製でしたが、現代では陶器やセラミック製など様々な素材のおひつが販売されています。
その中でもおすすめは、やはり元祖の木製おひつ。
木製おひつがおすすめの理由
おひつは、もともとは釜で炊いたごはんを入れて食卓まで運ぶ道具、そして保存の道具でした。そして木製ならではのメリットとして、軽い・吸放湿性・殺菌作用があげられます。
この吸放湿性が木製おひつの魅力でもあります。
炊き立てのごはんをおひつに入れると木が余分な水分を吸収してくれ、また、ごはんの水分が少なくなると今度は木が吸収していた水分をごはんに戻してくれます。
おひつには保温効果はありませんが、ごはんは適度な水分を保てるため冷めてもおいしいごはんが食べられるのです。
ちなみに、ごはんは冷めると難消化性でんぷん・レジスタントスターチが増え、糖質の吸収と血糖値の上昇を防ぎ太りにくくしてくれると言われています。
おひつはダイエットにも嬉しい存在ですね。
(おひつでのごはんの保存は、暑い時期は半日、その他の時期は1日程度が目安になります。)
桶型のおひつ
木製のおひつも、桶型のもの、曲げわっぱ型のもの、くり抜き型のもの…と様々。桶型:数枚の板を張り合わせてタガと呼ばれる輪で締められて作られる
曲げわっぱ型:一枚の板をぐっと曲げて紐で縫われて作られる
くり抜き型:木の塊をくり抜いて作られる
桶型のものが便利なのは、リサイズできるという点。
家族が多い時は5合サイズを使用し、子供が独立するなど家族構成が変わったら桶屋さんに修理に出し、3合サイズにリサイズしてもらう、ということが可能です。
こうすると、気に入ったおひつを1つ買えばずっと長く使えるということになりますね。
桶型おひつの選び方
材質は殺菌作用が強いといわれる杉やさわらがいいでしょう。タガは銅などの金属製のものが多くなっていますが、自然素材にこだわりたい方は竹のタガもあります。
木材は部屋の湿度により伸縮するので、乾いた状態や季節の時はどうしてもタガがゆるくなります。
竹のタガだと、木の伸縮にある程度合わせて伸縮してくれるので金属製のものよりゆるみが軽くなる傾向にあります。
そして、木と木をつなぎ合わせる糊が米であるとより良いでしょう。
大量生産の桶の場合、接着剤が使用されることが多いと言われています。
桶樽屋の職人さんが作られる場合、お米を練って作った米糊を使われることがあります。
口に入るものを入れる容器ですから、もしわかるようであれば接着に何を使っているか?も見てみるといいかもしれません。
桶型おひつのお手入れ
お手入れ方法はとても簡単ですが、少しだけコツがあります。●洗剤を使わないこと
洗剤が木に染み込みこむことになります。やわらかめのたわしなどで、十分に落ちます。
●乾いた布巾でよく拭き、しっかり陰干しすること
湿気はカビが生える原因となります。
端の方に水がたまりやすくなりますので、きちんと拭きとりましょう。
また直射日光等で急激に乾くと木が割れることがあるので、陰干しがおすすめです。
カビが生えてしまった場合は、紙やすりで木目に沿って軽くかけてあげると取れますよ。
●タガが緩んだら水を張る
おひつをしばらく使用しなかったり乾燥した部屋や時期には、タガが緩くなります。
その場合は、おひつに水を張りタガを元の位置に戻しましょう。
しばらくすると木が水分を吸って膨張し、またタガが効くようになります。
その後は水を捨て、しっかりと乾かして下さい。
桶型おひつは、何年も使用していると木が痩せてタガが効かなくなってくることがあります。
こうした時は、タガの締め直しが必要になるので桶屋さんに修理に出すと直してくれます。
黒ずみやカビなどの削りも桶屋さんは対応してくれますので、自分でできないかもと思った時は桶屋さんにご相談されるといいでしょう。
おひつは保温効果はないので、あくまでも一時的な保存の道具。
必ずしも必要なものではないかもしれませんが、あると暮らしが彩られることは間違いなしですよ。
気になっていた方は是非おひつを暮らしに取り入れてみて下さい。
ライター
礒畑 綾
発酵食料理教室・綾糀